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アメリカと戦って潰された12人の政治家たち

アメリカと戦って潰された12人の政治家たち

 

『アメリカに潰された政治家たち』(孫崎亨/小学館)の著者は、

外務省で国際情報局長を務め、

駐ウズベキスタン大使、駐イラン大使などを歴任している人物。

 

政治の裏側を知り尽くしている著者の孫崎氏は、

「日本の総理大臣は日本国民が決めているのではない」という。

 

では、誰が決めているのか?

そう、アメリカだ。

 

いったいどういうことなのか?

 

『アメリカに潰された政治家たち』(孫崎亨/小学館)を読み解いてみたい。

 

■アメリカが激怒する2つの虎の尾

最もアメリカが怒り出すいわゆる「虎の尾」は2つあると孫崎氏は言う。

 

1つは、在日米軍の削減

 

2つは、対中関係の改善

 

もちろん、その他にもアメリカの国益のために日本は政策を変更させられてきた。

たとえば、日本が大量に保有しているアメリカ国債を売却するのもご法度だ。

 

日本の政治家がアメリカに歯向かって「自主路線」を貫こうとすると、

アメリカの裏工作によって潰される。

 

総理大臣も潰される。

 

官僚も同じ。

外務省や大蔵(財務)省、経産省のなかで自主路線を目指す官僚は、

アメリカの顔色をうかがう首相官邸から放たれた矢によって左遷させられる。

 

だから、いまでは官僚内部には「対米追随路線」が主流になっている。

 

日本の政権が長期になるか短命になるかは、

アメリカの意向に反抗するのか、追随するのかによる。

 

長期政権を維持するには「対米追随路線」を敷かなければいけないという、

日本政府のなかには暗黙のルールができあがっているのだ。

 

 

 

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■孫崎氏が選んだ12人の政治家たち

 

 

(1)鳩山一郎

1954年に総理大臣に就任し、在日米軍経費を550億円から178億円へと減額させた。

日ソ共同宣言に調印し国交回復を果たしている。

 

(2)石橋湛山(たいざん)

1956年鳩山内閣のあと首相に就任。

全国の遊説で

「米国のいうことをハイハイ聞いていることは日米両国のためによくない」と発言。

 

(3)重光葵(まもる)

外相としてダレス国務長官に米軍撤退を提言するが撥ねつけられる。

1957年に狭心症で急死する。

 

(4)芦田均(ひとし)

1948年に首相となる。

米軍の有事駐留案を提案したことで、

GHQの管理下で誕生した東京地検特捜部のしかけた昭和電工事件により、

7か月余りで内閣総辞職となる。

辞職後に収賄容疑で逮捕、起訴されるが結果は無罪。

戦後の首相として初の逮捕者となる。

 

(5)岸信介

1957年に首相となる。

ダレス国務長官に

「現行の安保条約はいかにも米国側に一方的に有利であって、

まるで相互契約的なものじゃない」

と改定を迫る。

60年の安保騒動の責任を取って総辞職。

 

(6)佐藤栄作

1964年に首相に就任。

72年に沖縄返還を実現した。

そのときニクソン大統領との密約で、

沖縄返還と引き換えに繊維輸出規制を約束したが反故にした。

 

(7)田中角栄

1972年に首相に就任。

アメリカに先駆ける形で日中国交正常化を実現する。

74年に金脈問題で総辞職。

76年にロッキード事件で逮捕される。

 

(8)竹下登

1987年に首相に就任。

日本初の消費税を導入した。

89年に「防衛責任」の増強を求めるアメリカの要求を拒否した。

その後、リクルート事件により内閣総辞職となる。

 

(9)梶山静六

田中角栄の派閥に属し、のちに竹下派となる。

自治相、通産相、法相、官房長官などを歴任。

外資系金融企業の参入をもたらす金融ビッグバンに強く反対した。

2000年1月に交通事故にあってから体調を崩し政界を引退し6月に死去。

 

10)橋本龍太郎

大蔵相時代に、

各国が天安門事件に抗議して中国と閣議クラスの交流を停止したが、

他国に先駆けて中国を訪問している。

1996年に首相に就任。

クリントン大統領と普天間基地返還の同意を取り付ける。

米講演で「米国債の売却」を口にしニューヨーク株価を一時下落させた。

 

11)小沢一郎

2006年に民主党代表に就任。

09年に「米軍の極東におけるプレゼンスは第七艦隊で十分」と発言。

翌月、秘書が政治資金規正法違反で逮捕。

中国との関係を重視し626人を引き連れて胡錦涛主席を訪問している。

 

12)鳩山由紀夫

2009年に首相に就任。

普天間基地を県外移設の実現に行動するも

米国からの強硬な反対にあい実現できず、

2010年に首相を辞任。

 

東アジア共同体構想を唱えている。

 

 

■どうやってアメリカは岸内閣を潰したのか?

 

アメリカはどんな裏工作をして日本の政治家を潰すのか?

その手口はいくつかある。

 

軍人が横田基地から軍用ヘリで官邸へやってきて、

総理大臣を直接恫喝するということもあるそうだ。

 

竹下元首相は軍用ヘリから宙づりにされたというが、

これは都市伝説となっていて真相はわからない。

 

自殺や事故とみせかけて殺害されるケースもあるだろうが、

これも、確実な証拠があるわけではない。

 

ヤクザや右翼を雇って殺害したり事故を起こすこともあるが、

これも、正確なところは明らかになっていない。

 

まず、確実に言えることは、

大規模なデモ。

 

アメリカのCIAが他国の学生運動や人権団体、NGOなどに、

資金やノウハウを提供して転覆させることはよくあることだ。

 

 

岸内閣を辞職へ追い込んだのは、大規模なデモが原因だった。

安保に反対する学生たちが中心だった。

全学連(全日本学生自治会総連合)だ。

 

安保闘争のはじまる前、学生たちには資金はまったくなく、

電話代さえ支払いに窮する状態だった。

 

ところが、右翼活動家が全学連に資金提供し、

財界人とのパイプを作る。

これにより全学連は潤沢な資金を手に入れる。

 

たとえば、早稲田大学からの動員では、

デモ1回にバス30台もチャーターして学生たちを送り込んだ。

逮捕者の保釈金も用意した。

 

最初は反安保だったのが、いつのまにか「岸内閣打倒!」に、

 

デモの旗頭が変わっていった。

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■マスコミも官僚もアメリカにコントロールされている!

 

60年安保闘争の激化は新聞などのマスコミが煽ったからだ。

新聞は「安保反対」の論調を掲げていたのだが、

安保騒動が激しくなるにつれて「岸政権打倒」に傾いていった。

 

そして岸内閣打倒の目的を果たしたら

「反対デモは暴力行為だ」とマスコミはかき立て

デモは急に失速する。

 

当時の朝日新聞の論説主幹の笠信太郎は、

当時のCIA長官と非常に密接なつながりがある。

 

朝日だけでなく、各新聞社がアメリカの駐日大使やCIAの意向をうけ、

途中から安保反対者を批判する側にまわっている。

 

「日本の奇蹟的な戦後復興を可能したのはアメリカの援助があったからだ」

「アメリカに感謝せよ」などと、

アメリカとのむすびつきの重要性を強調したのだ。

 

これに反対する記者たちは粛清され、残ったのは対米追随派の人間ばかりになった。

 

当然のことながら、アメリカは日本政府の官僚に対しても、

表から裏から圧力をかけ意に沿わない者を排除してきた。

 

自殺や怪死した官僚はあとを絶たない。

対米追随派の政治家や首相官邸から一声で飛ばされることもある。

 

そうやって対米自主派の官僚は消えた。

 

アメリカは対米追随派の政治家を使うこともある。

岸は、「政権を潰したデモよりも、党内対策が一番大変だった」と述べている。

 

対米追随派の政治家の抵抗は強力で、

その闘いに精力をそそがなければならなかったという。

 

 

 

 

■どうやってアメリカは田中角栄を葬ったのか?

田中角栄が中国との国交正常化を実現したのが1972年9月。

 

キッシンジャーは

「汚い裏切り者どものなかで、

よりによって日本人野郎がケーキを横取りしたんだ」

と日本に対する怒りを爆発させている。

 

741010日には立花隆の『田中角栄研究/その金脈と人脈』と題した評論が、

『文藝春秋』に掲載され、

 

1022日には、外国特派員協会での講演で田中首相に対して、

この『田中角栄研究/その金脈と人脈』の問題に外国人特派員たちの質問が集中する。

 

23日には、このことを朝日新聞と読売新聞が一面トップで大々的に報じた。

「田中金脈追及へ動き急」

「政局に重大影響必至」

「政局に波紋を投げそうになってきた」

という見出しだ。

 

誰かが描いたシナリオ通りにことが進んでいるとしか思えないような、

ベストなタイミングだ。

 

結局、田中首相は741126日に辞任する。

 

そして76年にロッキード事件が発生する。

 

ロッキード事件の発端は米議会の多国籍企業小委員会が、

次のような事実を公表したことからはじまる。

 

「ロッキード社が、日本、イタリア、トルコ、フランスなど、

世界各国の航空会社に自社の飛行機を売り込むため、

各国政府関係者に巨額の賄賂をばらまいていた」

 

この小委員会がロッキード社を調査することになった経緯が実におかしい。

本来、別のところへ届けられるべき書類が間違ってこの小委員会に届けられ、

中身を見たら大変なことが書いてあったというのだ。

 

これは工作の匂いがプンプンする。

 

ロッキード社のコーチャン副会長は嘱託尋問を受けた。

嘱託尋問というのは、証人が外国にいる場合、

日本の検察は直接尋問ができないので、

日本の検事の立ち合いのもと、

アメリカ側の検事が代わりに尋問するというもの。

 

しかも、アメリカには司法取引がある。

コーチャンに対する尋問では、

「証言のなかに、

本人が日本の法律に違反する内容が含まれていたとしても、

罪に問わない」

という約束をしている。

 

これは田中角栄をはめるために仕組まれた尋問としか思えない。

 

この嘱託尋問によって得られた証拠によって、

田中角栄は有罪判決を受け、政治生命を絶たれたのだ。

 

 

 

■まとめ

 

いまだに日本はアメリカに占領されているということだ。

日本の政府は、アメリカの傀儡政権なのだから。

 

しかし、アメリカは日本だけでなく、世界のいたるところで、

同じようなことをやっている。

 

9.11同時多発テロからアフガニスタンへ侵攻し、

ビンラディンを殺害したのも、

イラクのフセイン大統領を死刑にしたのも、

 

アメリカの意にそぐわない者は抹殺するということだ。

 

日本にとって、本当の敵は、

中国や北朝鮮ではないのかもしれない。